洋食の講座 今日は「お肉」のお話と伺っております。私は栄養学が専門なので、バランス良く偏食はしないのですけども、あまり好きじゃあないのが焼肉とラーメンです。スポーツ栄養学という分野がございまして、スポーツ選手の栄養指導とその管理する仕事です。これまでラグビー、サッカー、相撲協会の選手を栄養管理してきましたが、契約の長かったのが東京読売巨人軍で、長嶋さんが監督の頃に6年間してきました。巨人軍を優勝させるのが仕事ですが、そのためには選手を強く、勝つために食事メニューを組み、一軍選手の奥様達にも栄養と料理を教えてきました。 戦後間もない頃は食べる物が少なくて栄養失調の人が多かったんですけど、昭和21年頃は一日1,903キロカロリー摂っていた。平成21年が1,861キロカロリーで、戦後間もない食糧難時代よりも減っているんです。沖縄の男性が短命になったのはメタボ日本一だからですが、カロリーが低くなっているのにメタボが問題になっている。常識的にはカロリーを摂るから太る。メタボになるから動脈硬化が進んで脳か心臓にきて病気にかかりやすくなる。カロリーが戦後の食料難の時代より少なくなっているのにもかかわらず、メタボが問題になって、メタボ対策を国が立てないと健康保険の制度が壊滅的になってしまう。そういうことで国を挙げてメタボ対策が行われていたはずなんです。好きな物を好きなだけ好きな時に食べる。これが要因のひとつですが、個人差が大きい時代になってきたんですね。 40代くらいからメタボの人が増えるのともう一つ、新国民病があります。ロコモティブシンドローム、略してロコモって呼ばれています。今では高血圧の患者さんよりも40代以上のロコモ予備軍の数が多くなって、こちらの対策が重要になってきています。メタボを予防しつつロコモも予防しつつ、栄養を摂り過ぎないように、必要な物をちゃんと食べる知識が必要になってきているかなっていう気がします。若くて栄養に関心がない方と高齢者の場合に問題なのは、血中アルブミン濃度が低くなるんです。たんぱく質が摂れなかったり、お野菜が摂れなかったり、栄養が偏っていると低くなります。 私達人間が何で成り立っているかという話をします。例えば体重50キログラムの人は6割が水で出来ていますから、30キログラムが水になります。人間にとって水が一番大事です。水無し生活では1週間くらいしか生きていけないです。50キロの中の30キロが水ですから、本体は20キロになります。その20キロの固形成分内の半分、10キロがたんぱく質で出来ています。 年齢をとるにしたがって若い頃より体重の増えている方が、中年以上になるとほとんどだと思います。じゃあ食べ過ぎたから太っているのかと言うと、年齢とともに、食べ過ぎなくても太るように出来ているんです。年齢をとるにしたがって、エネルギー所要量が低下するからです。基礎代謝が低下します。基礎代謝とは20度位の室温で、横になって寝ても眠っていない、目を開けた安静状態に必要なエネルギー量を言います。これが年齢をとるにしたがい下がっていく。なおかつ年齢をとると、体を動かすのが億劫になり活動量も低下し、カロリーを減らしていかないと体重が維持出来ない訳です。ある日突然に太るのでなく、何もしなくても基礎代謝の低下に体形が緩んでくる特徴があるんです。ですからカロリーを考えなくてはいけないです。ダイエットに「ちょっと待て、その一口が豚になる」というキーワードがあるんですが、クッキー1枚も要注意です。 お肉には色んな種類がありますけど、たんぱく質という栄養素の評価を比べた場合、ほとんどが100点満点の100点です。たんぱく質の構成中に含まれるアミノ酸ですが、特に私達の体の色々なものを作っていく必須アミノ酸が、どのくらい役に立つかを100点満点で評価する方法があるんですけど、どのお肉も100点ですから、自分の好きなお肉を自分の好きな料理法で食べていただければ良いのですけども、それぞれのお肉には栄養的に若干の違いがあります。たんぱく質以外の特徴をお話したいと思います。 栄養のバランスを考える時に思い出していただきたいのは、自分の歯を見ることです。人間の体を真半分に切った時に前の2つの歯をウサギさんが人参を持っているところからウサギの歯って呼ばれ、野菜を食べる歯です。その隣にある尖った犬歯が肉を引き千切る歯で、お肉を1食べたらウサギのように2倍の野菜を食べなさいという歯なのです。ウサギさんの歯が2本、狼の歯が1本、その後ろに穀物を磨り潰す臼の歯が4本あります。そういうバランスを考えて食べていくように、人間の歯が教えているんです。歯を思い出していただくことが、栄養のバランスが自動的に頭の中に入ってくるのではないかなという気がいたします。 (講演の内容は、主催者が抄録してまとめました/服部栄養専門学校にて) |
講師プロフィール
◆本多 京子◆ 医学博士 管理栄養士●プロ野球の他、ラグビー、スキー、相撲などスポーツ選手に対する栄養指導を経験する。また日本体育大学女子短期大学、専門学校等にて教壇に立つ。NPO日本食育協会並びに日本食育学会理事。日本紅茶協会ティーインストラクター会長。アロマテラピープロフェッショナルなど多方面で幅広く活躍をする。NHK[きょうの料理」をはじめ、テレビ、雑誌での健康と栄養に関するアドバイスやレシピを多数作成●『シニアの楽々元気レシピ(別冊NHKきょうの料理)』(NHK出版)、『Drクロワッサン血液力を鍛える食べ方』(マガジンハウス)、『おなかすっきり、腸美人法』(集英社)など著書多数。
【お肉のコラム】
◆食肉を柔らかく食べる◆ 加熱すればお肉は硬くなる、そこで柔らかく食べる工夫を教えます。 工夫、その1/筋肉対して直角に薄切りやひき肉にする。厚め肉を焼く場合は切断する、肉叩きでたたき、筋肉を破砕して収縮しにくくする。 工夫、その2/たんぱく質分解酵素のプロテアーゼを含む生姜、キウイフルーツ、パインアップルなどを利用して軟化させる。酵素は分解をするが、結合組織のコラーゲンには作用しないために長時間作用することは却って食味低下をもたらし注意を。 工夫、その3/調味料を利用する。ワイン・マリネ液に漬けた後に過熱処理をすると、肉が風味よく、柔らかくも。食塩の添加はジューシーさを生み、すじ繊維が太く風味のある牛肉は加熱直前に振り塩をすると、食味が良い。 豚肉や鶏肉は塩と香辛料をして5〜10分置くと臭みが取れ、加熱で保水性がよく、弾力ある過熱肉になる。 工夫、その4/長時間の湿熱と過熱で、長時間煮込み、結合組織のコラーゲンをゼラチン化する。 食肉に関するデータ:公益社団法人 日本食肉協議会発行『食肉の知識』引用 |
洋食の講座
厚切り豚ロースのソテーバルサミコソース 色々茸添え 僕、焼肉毎日でもいいぜ! それで焼肉食べに行った友人に野菜を全部分けてあげ、それ食わないからって。肉好きですから、今日の講習会はピッタリです。 次のレシピ、牛肉ですね。これも僕大好きです。広げて軽く下味をして下さい。ニンニク好きだけど匂いが嫌だって言う人は微塵切りでもいいんだけど、2,3ミリの厚でオリーブオイルでもサラダオイルでも、オリーブオイルの方が美味しいかな、まだ熱くないフライパンに入れる。熱くしちゃうとすぐ焦げるからね。最初は強火結構。オイルが沸いてくると、ニンニクから泡がぽこぽこ出てきます。これ誰がやっても、皆さんでも普通に出ます。チリチリなったらちょっと火を弱めます。そして油をフライパンの一方に片側に集める。ここでまた火をもっと弱めます。これでニンニクを焦がさないようにして、油にニンニクの香りと味を全部移行させます。移した後はニンニクはお役御免。イタリア人はこうやって食べます。 最初は予定になかったカルボナーラなので、レシピが可哀想に裏面にされちゃってます。カルボナーラね、難しいでしょ。お家でなかなか上手くいかないでしょ。煎り玉子状態になっちゃったり、生ぽかったり。これ(パンチェッタ)を炒めるのがまず大事です。あまり焦がさないようにって言っても、皆さんのお家ではフライパンがフッ素樹脂ですよね。炒めるって事が大事で、あまり強火で無い方がいいですね。ここはちょっと慎重にやってください。フッ素樹脂のフライパンだと焦げることはないと思うんですけど。今日は分かりやすいようにこの白いフライパンでやっているんですよ、見えるように、色が。ちょっと火が強いなと思ったらフライパン下してください。それが火加減ですからね。煮詰め加減、焼き加減は難しいです。僕らも難しいですよ。いつもこうして話してやっていますけど、ドキドキしてやっているんですよ。 ドレッシングを作ります。ニンニク、オリーブオイル、唐辛子とそこにお湯を少し入れる。油に塩入れたって駄目だからね、塩水だと直ぐ一緒になるからね。ニンニクとオイルと塩水でドレッシングを作っておく訳。ここでは(フライパン)塩が入っていないから、そこに塩っぱいお湯が入ってちょうどよくなるわけ。そこに茹だったパスタを入れる。そこで炒めちゃ駄目。どうしても皆なジャーって炒めなくっちゃ気がすまないのね。だからフライパンでやらないでお鍋でやりなさい。イタリアはそうだよ。でっかい鍋で作るでしょ、さぁー出来たぜーって。お母さんがテーブルへ持って行き、待っているお父さんや家族がパスタを入れる。テーブルの周りに皆でいて混ぜて取る。いかに炒めないかっていうことです。 スパゲッテイは6分、7分と袋に書いてあります。皆さんタイマー合わせますよね、それじゃあ間違える。7分だったら6分半、6分だったら5分40秒。もう30秒前に上げなければ駄目。だってフライパンに入れてから時間かかる、そうでしょう。お塩が足りない、コショウが足りないのって。盛るにしてもなかなか盛れない。それからお父さんご飯よって言ってからなかなか来ない。茹で上がってからお父さんの口に入るまで5分から6分かかる、この余熱っていうのは凄い。だから僕らいつも逆算しないとってね。逆算です。 (講演の内容は、主催者が抄録してまとめました/服部栄養専門学校にて) |
講師プロフィール
◆落合 務◆ ラ・ベットラ・ダ・オチアイ オーナーシェフ●フランス料理を志してフランス国内食べ歩きの帰路に立ち寄ったイタリアで料理に魅せられ転身後、イタリアで料理を学ぶ。東京赤坂にオープンしたイタリア料理店のグラナータ総料理長を任され、在日イタリア人からも高い評価を得る。その後東京銀座にオーナーシェフとしてラ・ベットラ・ダ・オチアイをオープンし、予約のとれないレストランと呼ばれる人気店になる。その後も銀座、名古屋、池袋にイタリア料理店を開店。独特の語り口で料理番組でも人気があり、料理学校の講師を務めるなどの活躍。イタリア料理の発展に寄与しカヴァリエール章を授与される。日本イタリア料理協会会長。厚生労働大臣賞「現代の名工」を受賞●『落合務の基本のイタリアン』(講談社)、『落合シェフのイタリアン』(世界文化社)など著書多数
【お肉のコラム】
■豚肉部位の特性と料理用途 部位とは、小売販売でどの部分に相当する肉かを表示しています。豚肉は牛肉ほど部位別の肉質に差が無いのが特色のため、調理法によって部位を選ぶ必要はない。ほとんどの部位が幅広い料理に使える。 ・かた(うで) かたロースを除いた部位で、肉厚で赤身も多い部分。ややきめが粗く肉食も濃い。薄切り、角切り、煮込み料理など応用範囲も広く、ひき肉に最適。 ・かたロース ロース部位の肩部分をかたロースと呼び、ロース特有の肉のきめ細さに加え、周辺の筋肉がロースを取り巻き独特の形状。若干の脂肪も交雑しておりロースに比べ、独特のコクがある。 ・ロース きめが細かく軟らかい。ロースを覆う厚い皮下脂肪は厚さを3~5ミリに整形され、この脂肪の持つコクと風味に旨みがある。必要以上に脂肪を取り除くことをしのない。全体的に形が整っているので切り身に利用される。トンカツの代表的部位で、肩に近い肉厚の部分はポークソテーに適する。 ・ヒレ 最も軟らかい部位で、全部赤身になっている。トンカツやソテー用に軟らかさで人気が高い。豚肉特有のコクに多少欠ける。店頭では紡錘形をした一本(約500グラム)の状態で販売され、料理に合わせて切り分けて使うと良い。 ・ばら 別名「三枚肉」と呼ばれ、脂肪と筋肉がバランスよく層をなしているものが良い。かたロースと並ぶ代表的部位。肉質は軟らかく、コクと風味に富に、脂肪が気にならなければほとんどの豚肉料理に適応する。脂肪が軟らかいので蒸したり、揚げたり、煮込むことで相当量の脂肪を取り除くことができる。ばら肉を巻き込んで「焼き豚用」「煮込み用」などに、またブロックや角切りでこってり風味の料理に。薄切りにしたものは野菜炒めや豚汁にと、料理の応用範囲も広い。骨付きばら肉はスペアリブとして最近普及し、骨の周囲の肉は味わい深く美味しいと評価。 ・もも(うちもも・しんたま) 大きな筋肉の塊からなる赤みの代表的な部位。特に「うちもも」はきめが細かく、肉色は淡く軟らかいので料理によってヒレと同様な使い方が出来、しんたまも肉色はやや濃いが肉質はうちももとほとんど変わらない。脂肪が少ないのであらゆる豚肉料理に使える。 ・もも(そともも) らんいちとそとももの二つの部位から成り立っている。らんいちはきめ細かく軟らかい赤身。そとももはきめがやや粗く、肉食もやや濃い目。覆っている脂肪は精肉ではおよそ5ミリ以下になっており、薄切り、角切り、焼肉用ブロックなど利用範囲が広い。 食肉に関するデータ:公益社団法人 日本食肉協議会発行『食肉の知識』引用 |