洋食の講座

第1部


講演 本多 京子さん

『お肉を賢く食べて健康長寿をめざそう!』


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 今日は「お肉」のお話と伺っております。私は栄養学が専門なので、バランス良く偏食はしないのですけども、あまり好きじゃあないのが焼肉とラーメンです。スポーツ栄養学という分野がございまして、スポーツ選手の栄養指導とその管理する仕事です。これまでラグビー、サッカー、相撲協会の選手を栄養管理してきましたが、契約の長かったのが東京読売巨人軍で、長嶋さんが監督の頃に6年間してきました。巨人軍を優勝させるのが仕事ですが、そのためには選手を強く、勝つために食事メニューを組み、一軍選手の奥様達にも栄養と料理を教えてきました。
 なぜそれが焼肉とラーメンを好きじゃない話になるかというと、私が勝てるメニューを一生懸命組んでも、選手の皆さんが焼肉とラーメンに負ける。あの時の経験から私は、精神的に焼肉とラーメンを敵のような気がしています。焼肉も何年か前に生まれて初めて食べたくらい敵でしたが、私もだんだん高齢になって「肉は食べなければいけない」って頭の中で分かっているので、今は一生懸命心してお肉を食べるように心がけています。
 レジメをご覧頂ながら話を聞いて下さいね。戦後間もない頃まで50歳そこそこの平均寿命が、最近は女性86.413、男性79.94歳で、「昔々ある所にお爺さんとお婆さんが居ました」から「あっちにもこっちにもお爺さんとお婆さんで、ある所に子供が居ました」に、時代は変わってきました。「金さん銀さん」が話題になった頃に百歳老人が153人で、今は5万4000人、後20年経つと100万人になるそうです。
 ちょっと前まで沖縄県は、豚肉消費量が多くて長寿だって言われていました。今男の人が都道府県別順位26位に落ち、「ニイロクショック」と世界のニュースになったんです。女の人は長生きを維持しているようですけど、短命になった理由の一つが、お父さんやお爺ちゃんは長生きをしているけれど、働き盛りの息子が先に亡くなるんです。仏様になる順番が逆になり、こちらは「逆さ仏現象」と言われています。心配なのはこの現象が日本中に起きることです。ちなみに新しいデータでは、長野県が男性5位、女性は1位です。
 日本人は元気に長生き出来る時代になってきましたが、「長生きをせざるを得ない時代」とも言え、私達は「元気で長生きをしないと幸せではない」時代とも言えます。長野県ではPPK、つまり「ピンピンと生き、コロリと死ぬ」という言葉が作られ、長野県佐久平にはピンコロ地蔵様が作られました。全国津々浦々から大勢のお参りがいらしてるそうです。地元ではピンコロご膳とかピンコロ弁当まで開発されています。
 厚生省が亡くなるまでに寝込むデータをとった事があります。NNKと呼ばれ,「寝ん寝んコロリ」の状態を言いますが、問題は誰が世話をするかということです。元気で長生きせざるを得ない時代に、何をどう食べたら良いかという研究が進んできています。

 戦後間もない頃は食べる物が少なくて栄養失調の人が多かったんですけど、昭和21年頃は一日1,903キロカロリー摂っていた。平成21年が1,861キロカロリーで、戦後間もない食糧難時代よりも減っているんです。沖縄の男性が短命になったのはメタボ日本一だからですが、カロリーが低くなっているのにメタボが問題になっている。常識的にはカロリーを摂るから太る。メタボになるから動脈硬化が進んで脳か心臓にきて病気にかかりやすくなる。カロリーが戦後の食料難の時代より少なくなっているのにもかかわらず、メタボが問題になって、メタボ対策を国が立てないと健康保険の制度が壊滅的になってしまう。そういうことで国を挙げてメタボ対策が行われていたはずなんです。好きな物を好きなだけ好きな時に食べる。これが要因のひとつですが、個人差が大きい時代になってきたんですね。
 カロリーを沢山摂り過ぎてメタボになっている人がいるということは、逆に半分の人が栄養失調になっている意味でもあります。去年くらいから新型栄養失調が話題になっています。食生活が豊かな時代になったにもかかわらず、栄養失調の人がいるんじゃあないかということです。一つは食べることに関心の無い若い人。野菜は食べていないし、朝ご飯も食べていない若い世代に栄養不足の問題が考えられます。もう一つが高齢者の人口に占める割合が多くなってきたことで、高齢の人の栄養失調が増えているという意味です。
 前期高齢者と言われている人は体もまだ元気ですし、食欲もあるので比較的メタボリックシンドロームになりやすい人が多いので、メタボ対策のための食生活が鍵になってきます。後期高齢者になりますと、歯が悪くなってきたり、胃腸の消化力が低下したり、運動量が減ってきますから、食欲が減退して食が細くなる傾向があります。そうなると、後期高齢者は低栄養によって免疫力が低下して、肺炎であっという間に亡くなる方が多くなったりします。
 世代とか年齢によって、栄養の摂取状況の背景に知識と意識にも大きな差があり、それが個人差を生んで、メタボがいる反面で痩せ過ぎの人もいてばらばらの時代になってきました。その人の食生活の在り様によって全く違ってくる時代になってきて、自分を知ることが重要になってきたのかなっていう気がします。

 40代くらいからメタボの人が増えるのともう一つ、新国民病があります。ロコモティブシンドローム、略してロコモって呼ばれています。今では高血圧の患者さんよりも40代以上のロコモ予備軍の数が多くなって、こちらの対策が重要になってきています。メタボを予防しつつロコモも予防しつつ、栄養を摂り過ぎないように、必要な物をちゃんと食べる知識が必要になってきているかなっていう気がします。若くて栄養に関心がない方と高齢者の場合に問題なのは、血中アルブミン濃度が低くなるんです。たんぱく質が摂れなかったり、お野菜が摂れなかったり、栄養が偏っていると低くなります。
 またお歳をとるに従って、あっさりした物、煮物にご飯でよい人が増えて、三食の中のお昼はお菓子と果物でいいような食生活が増えてくるんですね。そうしますと血中アルブミン濃度が下がる状態になり、それが痴呆とかにつながっていくんですね。カロリーは下げなくてはいけないけれど、必要な栄養をきちっと摂るためには、頭で食べる感覚が必要になってくるんじゃあないかっていう気がします。
 それから年齢を重ねると、体形を気にするあまりにお野菜中心の食生活をしていたりすると、野菜からも鉄分は摂れますけど、吸収効率はお肉が10倍も良いので、そういう物を食べないと貧血症になるっていうこともあります。ですから今は、高齢者も若い人と同じように栄養状態が悪くなっているという事なんです。私達はそのあたりをどう考えたら良いのかという時代になってきたと思います。

 私達人間が何で成り立っているかという話をします。例えば体重50キログラムの人は6割が水で出来ていますから、30キログラムが水になります。人間にとって水が一番大事です。水無し生活では1週間くらいしか生きていけないです。50キロの中の30キロが水ですから、本体は20キロになります。その20キロの固形成分内の半分、10キロがたんぱく質で出来ています。
 たんぱく質は英語でプロテインって言います。ギリシャ語のプロチウスから出来た英語で、語源は第一人者の意味です。第一番目に大切な物というのが元で、それが日本語のたんぱく質になりました。たんぱく質の「たん(・・)」は漢字で「蛋」と書き、卵の白身部分のことですが、白身に多い栄養素ということで蛋白質の言葉が作られました。例えば、髪の毛も爪も皮膚も筋肉も、それと硬い組織である骨もコラーゲンが骨全体の基本を作っていて、そこにカルシウムやマグネシウムがはまって骨が硬くなるのですが、骨のベースを作っているのもたんぱく質です。全身に酸素を運んでくれる血液の成分とか、免疫物質も全てたんぱく質で出来ています。
 一番大事な栄養素がたんぱく質なので第一人者の言葉です。水を除いた固形の半分がたんぱく質で、残りの10キロは平均的に7.5から8キロくらいの脂で体を守っています。そしてビタミン、ミネラルが2キロ。全身の200以上の骨を作っているカルシウムがいっぱいありそうな気がしますけど、カルシウムやマグネシウムを足しても2キロくらいです。体の構成物質で一番大事なたんぱく質をどうやって摂るかっていうことが、カロリーを摂り過ぎないでたんぱく質をしっかり摂るためにはどうしたら良いかってことが、大切な鍵を握っていると思います。

 年齢をとるにしたがって若い頃より体重の増えている方が、中年以上になるとほとんどだと思います。じゃあ食べ過ぎたから太っているのかと言うと、年齢とともに、食べ過ぎなくても太るように出来ているんです。年齢をとるにしたがって、エネルギー所要量が低下するからです。基礎代謝が低下します。基礎代謝とは20度位の室温で、横になって寝ても眠っていない、目を開けた安静状態に必要なエネルギー量を言います。これが年齢をとるにしたがい下がっていく。なおかつ年齢をとると、体を動かすのが億劫になり活動量も低下し、カロリーを減らしていかないと体重が維持出来ない訳です。ある日突然に太るのでなく、何もしなくても基礎代謝の低下に体形が緩んでくる特徴があるんです。ですからカロリーを考えなくてはいけないです。ダイエットに「ちょっと待て、その一口が豚になる」というキーワードがあるんですが、クッキー1枚も要注意です。
 その一方で年齢をとっても減らせないのがたんぱく質です。体の大きな成分を占め、国が決めた一日の摂取量というのが18歳から70歳以上まで同じです。この意味は年齢をとり基礎代謝の低下にカロリーをコントロールしなければいけないのだけれども、たんぱく質は若い人と同じだけ食べなきゃいけないってことです。例えば、女の人は50グラム、男の人だったら60グラムのたんぱく質が髪の毛や爪、皮膚、筋肉、骨、免疫物質に必要で、必要量は青年期から更年期なっても変わらないので、どうにかしてたんぱく質を摂ってあげなくてはいけないんです。一日50グラム、60グラムのたんぱく質をサーロインステーキで食べるとしたら、毎日300グラムを食べなければ駄目です。お肉は100グラムを頂いたとして、部位や種類によっても違いますが大体15グラムから20グラムちょっとしか入っていないので、50グラム、60グラムのたんぱく質を摂るには毎日300グラムのお肉を食べなければいけない計算になります。そのくらい食べてやっと必要量になるのです。ところが年齢をとるにしたがって、お肉を敬遠しがちになり、お野菜と煮物にご飯のスタイルになってきて、たんぱく質が足りない人が増えてきますね。年齢をとればとるほどたんぱく質を心して摂るように、食生活を見直す必要があります。
 じゃあお肉をお肉だけで300グラムも摂って良いのかって言われた時、気になる事がありますよね。カロリーとコレステロールです。特に女性の場合、50歳前後に閉経を迎えると女性ホルモンの消費量が少なくなり、消費量が低くなると、色々と体に変化が起きてきます。その一つが自動的にコレステロールを高くする特徴です。女性ホルモンが消費されないと、コレステロールが原料ですからいらなくなる。余っちゃう。それで歳とともに自動的に若干高くなる特徴があるんです。
 ここにサーロインステーキと鳥の手羽のフライドチキンがあります。お肉の量はどっちも100グラムです。コレステロールが高いのはどっちと思います? 多分サーロインステーキが低いって答えますよね。カロリーを見ますと、ステーキは牛の肉ですからカロリーは高いですけれど、コレステロールは鳥手羽のフライドチキンがサーロインの2倍です。つまりカロリーとコレステロール値は比例しません。次は豚のバラ肉。脂があってコレステロール値も高い気がしますけど、こちらも鳥のフライドチキンの半分です。皆さんにカロリーとコレステロールは、あまり関係ないってことを覚えておいて欲しいです。
 ただカロリーを沢山摂り過ぎると、血中の脂質が高くなるので年齢を重ねるにしたがって少な目のお肉を選んで下さい。カロリーと脂肪の低いお肉を選んだとしても、油をいっぱい使った調理法ですと、カロリーがプラスされます。大事なことは調理法との掛け算ですから、2つの事でカロリーのコントロールをしていただき、お肉を摂る時にあまり敬遠してはいけないなってことをぜひ覚えていただきたいと思います。
 コレステロールが低過ぎる人は、低栄養を表していることなので痴呆になりやすいですから、余り低くならないようにして下さいね。元気で長生きするためには、少し小太りの体形が一番良いと言われています。栄養状態の良さも大事なのでコレステロールを気にし、体形を気にされている方はそのことを頭の中に置きながら、自分に適したお肉をどのくらい、どういう調理法かも合わせて考えてお肉選びを上手にしていただきたいと思います。

 お肉には色んな種類がありますけど、たんぱく質という栄養素の評価を比べた場合、ほとんどが100点満点の100点です。たんぱく質の構成中に含まれるアミノ酸ですが、特に私達の体の色々なものを作っていく必須アミノ酸が、どのくらい役に立つかを100点満点で評価する方法があるんですけど、どのお肉も100点ですから、自分の好きなお肉を自分の好きな料理法で食べていただければ良いのですけども、それぞれのお肉には栄養的に若干の違いがあります。たんぱく質以外の特徴をお話したいと思います。
 たんぱく質は別名「食事いらずの栄養素」って言うんです。お腹が空いていると寒い、食べたら暖かくなりますよね。食事をすると体が温かくなる働きを食事誘発性熱産生と呼び、食物が分解してエネルギーになって体の体温を上げることをそういう言葉で呼んでいます。例えば生きている人は温かいですよね、死んだ人は冷たい。生きている人の熱を作り出す効率の良さを栄養素の中で比べると、たんぱく質、糖質、脂質の3つが熱を作り出す元です。生きている人はこの3つを食べないと、体が冷たくなってしまいます。食べた後に体を暖める作用が一番強いのがたんぱく質で、それでたんぱく質を食事いらずの栄養素っていう言い方をするんです。たんぱく質が足りない人は冷えに悩まされますよね。菜食主義者とか女の人に手足が冷える人が多いですけど、たんぱく質が足りないと体温が上がりにくいってことがあります。
 それと私達は毎日ストレスに曝されて、へこまないで生きていかれるのはストレス対抗ホルモンが副腎から分泌されるからです。その原料になるのが全てたんぱく質です。ストレスに強くなる栄養素でもあり、体を構成する重要な成分でもあり、体を温める働きを沢山含んでいる食品がお肉です。
 お肉にどういう違いがあるかと言うと、成分は殆ど一緒ですけども、特徴的な要素としては、牛肉って赤黒い色をしていますが、濃いお肉は鉄分が多いです。しかもお肉の鉄はヘモ鉄と言って、たんぱく質が吸収されやすい鉄分で、貧血の予防とか改善に役に立つ鉄分なんです。アミノ酸がくっ付いたものをペプチドって言うのですけど、このミッドファクターっていう成分が牛肉に多い特徴があります。それでスポーツ選手は焼肉が好きじゃあないかって気がするんですけどね。それから血管の壁を作るエラスチンというたんぱく質とかが、牛肉には多かったりします。日本はすき焼の食べ方がお馴染みですけど、色んな物を一緒に合わせて食べた方が良いというのは、そういう特徴があるからです。
 豚肉は牛肉と同じように良質のたんぱく質ですが、特徴はビタミンB1が多いことです。これは脚気の予防に役立つだけではなくて、脳の頭脳強化ビタミンです。だから「B足りんは脳タリン」って言われています。豚肉をニラとかネギ、ニンニクと合せて食べると、ビタミンB1と匂いの元のアリシンがくっ付いて、体の中でアリナミンが出来る。その研究によるアリチアミンからアリナミンの薬を作ったくらいなので、B1を含んだ豚肉の大きな特徴と思います。
 鶏肉はカロリーが低く、カルニチンというアミノ酸が含まれ、この成分が運動時の持久力につながりもあるので、マラソン選手とか体重を増やしてはいけないけどたんぱく質を摂らなければいけない人に、鳥のササミを湯掻いた不味そうな物を味付けないで食べているスポーツ選手の話をよく聞きます。それから羊のラムを使ったジンギスカン。ラム肉にもカロチニンが赤い肉に多くて、運動能力の向上につながりますから、スポーツ選手はジンギスカンが大好きで焼き肉だけでなく食べられています。
 お肉を食べる時には2倍のお野菜を食べるように言われます。お肉に無いのがビタミンのAやCで緑黄色野菜と食物繊維が殆ど含まれていません。ビタミンAとかCに食物繊維の多い素材と組み合わせると、肉の栄養素に不足しているものと組み合わができ、カロリーを摂らずに必要な栄養素をプラスする。それによってお肉の栄養素をパーフェクトに体が利用できる。そういう食材の組み合わせでメニュー作りをしていくといいでしょうね。

 栄養のバランスを考える時に思い出していただきたいのは、自分の歯を見ることです。人間の体を真半分に切った時に前の2つの歯をウサギさんが人参を持っているところからウサギの歯って呼ばれ、野菜を食べる歯です。その隣にある尖った犬歯が肉を引き千切る歯で、お肉を1食べたらウサギのように2倍の野菜を食べなさいという歯なのです。ウサギさんの歯が2本、狼の歯が1本、その後ろに穀物を磨り潰す臼の歯が4本あります。そういうバランスを考えて食べていくように、人間の歯が教えているんです。歯を思い出していただくことが、栄養のバランスが自動的に頭の中に入ってくるのではないかなという気がいたします。
 私も年齢をとるにしたがってカロリーを低くしなければいけないけど、賢くお肉を食べることが必要なので、焼肉以外のお肉の料理を意識して毎日食べるようにして、元気に健康長寿で生きたいなぁ、と思っております。皆様方に参考にしていただくことが一つでもあれば幸せでございます。

(講演の内容は、主催者が抄録してまとめました/服部栄養専門学校にて)

講師プロフィール
◆本多 京子◆
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医学博士 管理栄養士●プロ野球の他、ラグビー、スキー、相撲などスポーツ選手に対する栄養指導を経験する。また日本体育大学女子短期大学、専門学校等にて教壇に立つ。NPO日本食育協会並びに日本食育学会理事。日本紅茶協会ティーインストラクター会長。アロマテラピープロフェッショナルなど多方面で幅広く活躍をする。NHK[きょうの料理」をはじめ、テレビ、雑誌での健康と栄養に関するアドバイスやレシピを多数作成●『シニアの楽々元気レシピ(別冊NHKきょうの料理)』(NHK出版)、『Drクロワッサン血液力を鍛える食べ方』(マガジンハウス)、『おなかすっきり、腸美人法』(集英社)など著書多数。

【お肉のコラム】
◆食肉を柔らかく食べる◆

加熱すればお肉は硬くなる、そこで柔らかく食べる工夫を教えます。

工夫、その1/筋肉対して直角に薄切りやひき肉にする。厚め肉を焼く場合は切断する、肉叩きでたたき、筋肉を破砕して収縮しにくくする。

工夫、その2/たんぱく質分解酵素のプロテアーゼを含む生姜、キウイフルーツ、パインアップルなどを利用して軟化させる。酵素は分解をするが、結合組織のコラーゲンには作用しないために長時間作用することは却って食味低下をもたらし注意を。

工夫、その3/調味料を利用する。ワイン・マリネ液に漬けた後に過熱処理をすると、肉が風味よく、柔らかくも。食塩の添加はジューシーさを生み、すじ繊維が太く風味のある牛肉は加熱直前に振り塩をすると、食味が良い。
豚肉や鶏肉は塩と香辛料をして5〜10分置くと臭みが取れ、加熱で保水性がよく、弾力ある過熱肉になる。

工夫、その4/長時間の湿熱と過熱で、長時間煮込み、結合組織のコラーゲンをゼラチン化する。

食肉に関するデータ:公益社団法人 日本食肉協議会発行『食肉の知識』引用

洋食の講座

第2部


落合 務料理話
おいしい調理のコツ教えます
1厚切り豚ロースのバルサミコソース色々茸添え 2牛肉のピザ風 ブロッコリ入れ 3カルボナーラ

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厚切り豚ロースのソテーバルサミコソース 色々茸添え

──材料(2人前)──
豚ロース      180g x 2
バルサミコ酢    60~80ml
塩、コショウ、砂糖 適量
バター       10g
茸         お好みで

──作り方──
@豚のロースのバラ先部分をたたいてのばす。
A筋切りをして両面に塩をする。
B茸を小さく切り分け、塩をしておく。
Cフライパンに豚ロース背脂の部分から焼く。
D背脂に焼き目が付いたら、皿にのせる時表になる側をフライパンに置き中火にして、なるべく肉にかぶらないようにBを入れフタをする。
E2~3分したらフタをとり、肉を裏かえして火からおろし、1分おく。
Fその後皿に茸と肉を盛り付け、フライパンにバルサミコ酢を入れ2/3まで煮つめ塩、コショウ、砂糖を加えて味をみる。味がよければバターを入れて、余熱でかきまわしながら溶かし、肉にかけて出来上がり。

牛肉のピザ風 プロッコリ入り

──材料(2人前)──
牛肉うす切り   200g
(小さめに切り塩しておく)
トマトジュース  200ml(無塩)
ニンニク     1粒
唐辛子      1/2本
ブロッコリ    120g
(小分けして電子レンジて火を通す)
パルメザンチーズ 30g
オリーブ油    大さじ2~3
塩、コショウ   適量

──作り方──
@フライパンでニンニク唐辛子オイルを作る。
A@にトマトジュースを入れ、1/2まで煮つめ、塩で味をしたら、ボールにあげておく。
B上のフライパンを洗い、オリーブ油大さじ1~2を入れて火を強くして、煙が出たら牛肉うす切りをささっと焼く。
CそこにAのトマトソース、ブロッコリを入れひと煮立ちしたらパルメザンチーズ1/2を入れ混ぜたら皿に盛り、残りのパルメザンチーズを振る。

カルボナーラ

──材料──
全卵      2個
卵黄      2個分
パンチェッタ  80g
(もしくは、ペーコン)
パルミジャーノ 大さじ3
白ワイン    100cc
オリーブオイル 大さじ2
粗挽き黒胡椒  適量
スパゲティー  160g

──作り方──
@ボウルに、全卵と卵黄、粗挽き黒胡椒、パルミジャーノを入れ、よく混ぜ合わせる。
Aパンチェッタはマッチ棒より少し太めに切る。パンチェッタが無い場合は、ベーコンを同様に切り、塩で下味をつける
Bフライパンにオリーブオイル、2を入れ、焦がさないように肉の脂を出しきるつもりで中火て炒める。
CBに白ワインを加え、フライパンをゆすり、焦がさないように水分を蒸発させ、肉と白ワインのうまみを濃くする。
DCに、スパゲティーの茹で汁約60ccを加え、フライパンをゆすり、オイルと汁がトロリとしたら、火を止める。
EDに茹であげたスパゲティー、@を混ぜ合わせ、再び中火にかけて、なめらかなトロリとしたゆるいクリーム状になるまでよくゴムべらで混ぜる。

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 僕、焼肉毎日でもいいぜ! それで焼肉食べに行った友人に野菜を全部分けてあげ、それ食わないからって。肉好きですから、今日の講習会はピッタリです。
 最初のレシピは厚切り豚ロースのソテー。僕達はバラ先と言って肉を叩いて、筋切りします。肉と脂の間のところを焼くと反るんで焼きあがりがみっともないんですよ。バラ先の硬い部分は火が通りにくいので、ちょっと包丁で叩いて、ロース部分より薄くして置く。これが大事です。
 下味はきちんとします。塩を振り過ぎないようにほどほどに。この下味がぜったい大事です。皆さん、豚カツ作る時に後でソースで食べるんだからって、下味しないことはないと思うんですけど。しないとなんかボケますよ。下味って本当に大事です。今日はサービスでスパゲッテイ一品作りますけど、スパゲッテイの下味も大事なんですよ。
 焼き方です。豚ロースは脂身から焼いてね。脂は皆さん好きじゃないでしょ。だけどしっかり焼くと美味しいですよ。生姜焼でもあっという間に色が付かないうちに火が通ちゃうじゃあないですか、色付かないと美味しくない。しゃぶしゃぶは色つかないからね。
 料理ってね、レシピでの分量はいくらでも出せる。後は火加減だけです。僕達は火加減って、非常に難しいと思っています。昨日できた料理が今日できないよ。同じ火加減でやったつもりでも、食材の水分の入り方が多かったり少なかったり違うでしょ。
 僕を見ていて気つきませんか、フライパンを動かしていないでしょう。皆さんの場合は動かしていないと仕事しているような気がしないんでしょ。フライパンがじっとしているのも仕事ですよ、ほんと。中を気にして前後左右に動かしちゃ駄目、動かさないで。これでしばらくお話できます。待ちですよ、これ大事。
 お肉焼く時に裏表ひっくり返していませんか。そうやるとパサパサになっちゃう。豚とか鶏肉は、生嫌いという気持があるじゃあないですか、それで何回もひっくり返したりする。焼き過ぎるとパサパサ感がどうしても出てきちゃう。牛肉はミデイアムも食べますけど、生は嫌でしょうけど焼き過ぎないくらいが本当に美味しい。ジンジャポークをパサパサにしたら、お肉が可哀想だなって気がしますよね。鶏肉も、皮の面をじゃーって押し付けて焼いてしまって、そうすると皮が伸びますから伸びたまま固まっちゃうんです。そしたら火を落とし、蓋して弱火にする。引っ繰り返さないで焼けますよ。皮はパリパリ、裏側の肉は焼いてないからパサパサにならない。魚も同じよ。厚みのある魚は皮目から焼く。皮が焼け、その時点で火を弱くして蓋をして置くと、裏側は焼かなくても焼けます。裏側はなんて言うかな、硬くならないんですね。これは何にでも応用できます。
 一緒に付け合わせも作っちゃおう。今日は茸ですから水分がありますので焦げない。ちょっと待ちがあるんで、その間にメールとかラインとかさ、やっていたらいいんじゃない。ここで僕、初めて蓋を開けましたよね、焦げてないでしょ。これって火加減なんです。火加減で何もしないでいいんだもん。落合は何も仕事してないじゃんって言われたらどうしよう。でもさっき言いましたよね、こうやってじっとしているのも仕事だって。引っ繰り返して、一回火を止めて、蓋をしてちょっと置きます、これが大事です。
 皆さんご家庭で食べる時、ローストした肉は寝かすのが必要ですよ。寝かさないですぐ切ると、後で肉汁がどんどん出てしまう。ちょっと寝かすってのが大事です。まあ1分、2分位ですかね。お肉の厚さによりますけど。肉の方は真ん中から切っちゃ駄目。一番焼け難い叩いた部分がよく焼けています。筋も切って反ってない。裏って焼いてないよね、よーく見るとちょっとたんぱく質の塊みたいなのが少し出ています。白いぽちょっとしたのが出ちゃうと、ちょっと焼き過ぎね、本当は。これが大事ですね。

 次のレシピ、牛肉ですね。これも僕大好きです。広げて軽く下味をして下さい。ニンニク好きだけど匂いが嫌だって言う人は微塵切りでもいいんだけど、2,3ミリの厚でオリーブオイルでもサラダオイルでも、オリーブオイルの方が美味しいかな、まだ熱くないフライパンに入れる。熱くしちゃうとすぐ焦げるからね。最初は強火結構。オイルが沸いてくると、ニンニクから泡がぽこぽこ出てきます。これ誰がやっても、皆さんでも普通に出ます。チリチリなったらちょっと火を弱めます。そして油をフライパンの一方に片側に集める。ここでまた火をもっと弱めます。これでニンニクを焦がさないようにして、油にニンニクの香りと味を全部移行させます。移した後はニンニクはお役御免。イタリア人はこうやって食べます。
 今回ちょっと火が強かったです。そういう時どうするか。料理教室で奥様達にやってもらうんですけど、焦げちゃう、焦げちゃうって凄いんですよ。「火から降ろしたらいかがですか」と言うと、そう言えばそうだわ。ニンニクは刺して、ガリッといわなければいいでしょう、オリーブオイルに味も香りも全部移っています。ここで唐辛子。もう火止まっていますよ、止まっている中に入れて、これで十分辛くなります。唐辛子は余熱で十分です。
 これから肉を焼きます。強火です。レシピに書いてないですけどモッツアレチーズを、入れなくても入れてもよいってことです。ピザ風だから入れます。これを強火で、煙が出てくるまで、火傷しないでね。牛肉が薄いからすぐ焼けちゃう、熱いうちに入れると焼かないうちに火が通っちゃうって感じだね。いきますよー、多いかなー肉、はい、火を止めます。もうこれだけでいいんです。これで出来上がり。ここにオレガノとかパジリコとかローズマリーとか香りを付けておくと、ちょっとイタリアの感覚ですよね。今日はおしゃれです。これ今牛肉でやっていますけど、豚、鶏肉で問題ありません。美味しいですよ。
 これピザみたいでしょ、だからピッツア風。ピザ職人が作った牛肉料理はこうなるだろう。だからピザ屋さん風とも言います。もう大昔からある伝統的な料理ですね。

 最初は予定になかったカルボナーラなので、レシピが可哀想に裏面にされちゃってます。カルボナーラね、難しいでしょ。お家でなかなか上手くいかないでしょ。煎り玉子状態になっちゃったり、生ぽかったり。これ(パンチェッタ)を炒めるのがまず大事です。あまり焦がさないようにって言っても、皆さんのお家ではフライパンがフッ素樹脂ですよね。炒めるって事が大事で、あまり強火で無い方がいいですね。ここはちょっと慎重にやってください。フッ素樹脂のフライパンだと焦げることはないと思うんですけど。今日は分かりやすいようにこの白いフライパンでやっているんですよ、見えるように、色が。ちょっと火が強いなと思ったらフライパン下してください。それが火加減ですからね。煮詰め加減、焼き加減は難しいです。僕らも難しいですよ。いつもこうして話してやっていますけど、ドキドキしてやっているんですよ。
 もう一つすごく大切な事です。皆さんスパゲッテイ作る時に、最初にパスタを茹で始めるのね。鍋でこう始めると、こっちのパスタが先に茹っちゃう。パスタはソースの目途が立ってから茹でてね。ソースが出来上がるなーと思った頃、パスタを入れること。ソースは出来るのを待っていられます。パスタは茹っちゃたら待てないからね。これすごく大事ですよ。
 さっき油もちょっと足しましたけど、この油が料理の出汁になる。レシピには白ワインってありますけど無かったらいりません。じゃ何を使うのか。無かったら水を入れる。必ず火止めて、油取ってから水入れてね。油はダシですから。
 それともう一つ、パスタ茹でる時に入れるお塩はおまじないじゃあないよ。ちゃんと入れないと駄目よ。これ下味になる。パスタに塩付けしないからボケる。美味しく出来たソースに味の付いていないパスタを入れるから、味がぼけるんですよ。そしてじゃーっと擦る。炒めるのは焼きそばですよ、スパゲッテイは炒めないからね。これ本当に大事だよ。
 海水は大体3%から3.5%、パスタは2%くらいで入れました。最初よく掻き混ぜて。掻き回さないと茹で上がった時に4,5本束になっていることありますよね。最初だけいつもかき混ぜればよいです。15秒、20秒間パスタが重なっていないように見なければだめだよ。パスタとパスタの間をお湯が通ってくれればよいです。
 皆さんよく「スパゲッティの茹汁を使う」って言いますよね。何にでも使えませんよ。トマトのパスタ、ミートソースも使いません。アーリーオーリーってイタリア語でオーリーがオリーブオイル、アーリーがニンニク料理でペペロンチーノが唐辛子。今日はさ、パスタに塩しても、ここは油でしょ。油でどうやってソースになるの。ここに水分が入らないとソースにならないでしょ。水分って何かって。だからここで茹でたお湯をニンニクとオイルと唐辛子に入れて使うというわけ。茹でたパスタをよくきって、もうパスタに味ついていますから、この塩分のお湯で茹でているから塩味がパスタに味付いてる。

 ドレッシングを作ります。ニンニク、オリーブオイル、唐辛子とそこにお湯を少し入れる。油に塩入れたって駄目だからね、塩水だと直ぐ一緒になるからね。ニンニクとオイルと塩水でドレッシングを作っておく訳。ここでは(フライパン)塩が入っていないから、そこに塩っぱいお湯が入ってちょうどよくなるわけ。そこに茹だったパスタを入れる。そこで炒めちゃ駄目。どうしても皆なジャーって炒めなくっちゃ気がすまないのね。だからフライパンでやらないでお鍋でやりなさい。イタリアはそうだよ。でっかい鍋で作るでしょ、さぁー出来たぜーって。お母さんがテーブルへ持って行き、待っているお父さんや家族がパスタを入れる。テーブルの周りに皆でいて混ぜて取る。いかに炒めないかっていうことです。
 ハイ出来ました。パスタは落合流です。パルミジャーノを大体大匙2杯くらいですね。そこに粗挽きの黒胡椒はいっぱい入れなきゃ駄目よ、いっぱい入ることがカルボナーラで、炭の粉って言うんだから。カルボーネが炭、炭を作る人がカルボナーラですからね。これには全卵一個、卵黄一個が一人前、これにパルミジャーノが入って、コショウが入って、これがもうカルボナーラの材料です。牛乳とか生クリームは入りません。牛乳、生クリーム入れるなんて下手糞なんだよ。結局水分が入るわけだから、固まりにくくなる。もうその分味が薄くなるでしょ。
 パスタチェック。なかなかこれ一本取れませんよね。箸を鉤棒に削り、これだと必ず一本もれなく一本、どなたでも漏れなく一本取れます。これがある程度湯立ってこないと引っかかりません。それでパスタは冷まして置かなければ駄目よ、こっちは。冷まして置くのが大事。皆さん熱した時に卵を入れるからすぐ固まっちゃうんですよ。フライパンに火をつけおいて、スパゲッテイを入れておいて、そこに卵を入れるから、ワーどうしよう、どうしようになっちゃうんですよ。冷めているんだから、常温にね、誰がやっても固まらないです。熱いのをそのままに固まりにくい温度に冷ましておくっていうことなんです。皆さん見てて、あと1分ですね、この1分も大事。

 スパゲッテイは6分、7分と袋に書いてあります。皆さんタイマー合わせますよね、それじゃあ間違える。7分だったら6分半、6分だったら5分40秒。もう30秒前に上げなければ駄目。だってフライパンに入れてから時間かかる、そうでしょう。お塩が足りない、コショウが足りないのって。盛るにしてもなかなか盛れない。それからお父さんご飯よって言ってからなかなか来ない。茹で上がってからお父さんの口に入るまで5分から6分かかる、この余熱っていうのは凄い。だから僕らいつも逆算しないとってね。逆算です
 これ火ついていませんよ。火ついてないお鍋どうするんですか。さっきちょっとほらパンチェッタの油とそれとフリズリーと合せて。こういうのをフライパンでやるからこぼれちゃう。お鍋でやると楽なんです。ここで入りまーす。塊はしないでしょ、逆に。ほっといたって全然焦らない。ここでよく全体を混ぜる。混ざりました、ここで初めて火をつけます。ここで自分の固さで止める訳だけど、この鍋の底と縁は違うから、ほら、直ぐくっついちゃうよ、気をつけないと。強火でやると怖いなと思ったら少し火を落として中火くらいで、底をこそげる様にしないとすぐ固まりますから。後にお鍋の余熱があるからね。お鍋ってこう直ぐ冷めないからね。余熱があるから。今皆さんに見せ過ぎたんで、今日はやばかったです。
 盛ってみます。スパゲッテイに塩、コショウしてない、炒めてないでしょ。最後に盛ったパスタをひねってやると、スパゲッテイがちょっとこんもりする。ここで粗挽きの胡椒。作るときに一切コショウいれないで、食べる時に自分の分だけ胡椒して食べる。えー3品終わりました。今日頂いた時間は80分、75分経ちました。あと5分くらいご質問ございますか。

(講演の内容は、主催者が抄録してまとめました/服部栄養専門学校にて)

講師プロフィール
◆落合 務◆
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ラ・ベットラ・ダ・オチアイ オーナーシェフ●フランス料理を志してフランス国内食べ歩きの帰路に立ち寄ったイタリアで料理に魅せられ転身後、イタリアで料理を学ぶ。東京赤坂にオープンしたイタリア料理店のグラナータ総料理長を任され、在日イタリア人からも高い評価を得る。その後東京銀座にオーナーシェフとしてラ・ベットラ・ダ・オチアイをオープンし、予約のとれないレストランと呼ばれる人気店になる。その後も銀座、名古屋、池袋にイタリア料理店を開店。独特の語り口で料理番組でも人気があり、料理学校の講師を務めるなどの活躍。イタリア料理の発展に寄与しカヴァリエール章を授与される。日本イタリア料理協会会長。厚生労働大臣賞「現代の名工」を受賞●『落合務の基本のイタリアン』(講談社)、『落合シェフのイタリアン』(世界文化社)など著書多数

【お肉のコラム】
■豚肉部位の特性と料理用途

部位とは、小売販売でどの部分に相当する肉かを表示しています。豚肉は牛肉ほど部位別の肉質に差が無いのが特色のため、調理法によって部位を選ぶ必要はない。ほとんどの部位が幅広い料理に使える。
pork-parts-fig ・かた(うで)
かたロースを除いた部位で、肉厚で赤身も多い部分。ややきめが粗く肉食も濃い。薄切り、角切り、煮込み料理など応用範囲も広く、ひき肉に最適。
・かたロース
ロース部位の肩部分をかたロースと呼び、ロース特有の肉のきめ細さに加え、周辺の筋肉がロースを取り巻き独特の形状。若干の脂肪も交雑しておりロースに比べ、独特のコクがある。
・ロース
きめが細かく軟らかい。ロースを覆う厚い皮下脂肪は厚さを3~5ミリに整形され、この脂肪の持つコクと風味に旨みがある。必要以上に脂肪を取り除くことをしのない。全体的に形が整っているので切り身に利用される。トンカツの代表的部位で、肩に近い肉厚の部分はポークソテーに適する。
・ヒレ
最も軟らかい部位で、全部赤身になっている。トンカツやソテー用に軟らかさで人気が高い。豚肉特有のコクに多少欠ける。店頭では紡錘形をした一本(約500グラム)の状態で販売され、料理に合わせて切り分けて使うと良い。
・ばら
別名「三枚肉」と呼ばれ、脂肪と筋肉がバランスよく層をなしているものが良い。かたロースと並ぶ代表的部位。肉質は軟らかく、コクと風味に富に、脂肪が気にならなければほとんどの豚肉料理に適応する。脂肪が軟らかいので蒸したり、揚げたり、煮込むことで相当量の脂肪を取り除くことができる。ばら肉を巻き込んで「焼き豚用」「煮込み用」などに、またブロックや角切りでこってり風味の料理に。薄切りにしたものは野菜炒めや豚汁にと、料理の応用範囲も広い。骨付きばら肉はスペアリブとして最近普及し、骨の周囲の肉は味わい深く美味しいと評価。
・もも(うちもも・しんたま)
大きな筋肉の塊からなる赤みの代表的な部位。特に「うちもも」はきめが細かく、肉色は淡く軟らかいので料理によってヒレと同様な使い方が出来、しんたまも肉色はやや濃いが肉質はうちももとほとんど変わらない。脂肪が少ないのであらゆる豚肉料理に使える。
・もも(そともも)
らんいちとそとももの二つの部位から成り立っている。らんいちはきめ細かく軟らかい赤身。そとももはきめがやや粗く、肉食もやや濃い目。覆っている脂肪は精肉ではおよそ5ミリ以下になっており、薄切り、角切り、焼肉用ブロックなど利用範囲が広い。

食肉に関するデータ:公益社団法人 日本食肉協議会発行『食肉の知識』引用
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