中華の講座

第1部


講演 柴田 博さん

『肉を食べる人は長生きする』


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 肉を食べる人は長生きをする。この演題が皆様へのご案内です。私は現在、人間総合科学大学の学部長をしておりますが、肉を食べる人は長生きをするというタイトルは、昨年今頃出した本の内容です。PHP研究所から出版され結構売れていまして、今春には台湾と韓国でも翻訳されます。台湾の人口は2千3百万人、中国は13億人ですから、中国でも読まれ、多くの人に「肉を食べる人は長生きをする」という考えが広まれば、うれしいですね。
 肉が人間にとって何で元気の源なのかを説明します。人間はもともと肉食です。これがどっかで勘違いされちゃって、日本人は穀物食べて発達してきたなんて馬鹿なことを言う人もいます。人間は猿から進化しました。猿は一部違うのもあるのですが基本的に草食で、その猿の中の肉を食うのが猿人といって人類の先祖になっているんです。アフリカのサバンナ砂漠、今から25万年前ですね。人類は海に近い所は魚介類を食べますが、海に近い所が殆どないですし、魚なんて腐りやすいですから2キロメートル離れたらもう刺身は届かない、それで基本的にはお肉です。
 その他に人類は何を食べていたかというと、木の実や果物です。野菜も同じように、植物性の食品は殆ど動物に対して毒をもって出来ております。植物は自分で逃げたり出来ないですから、食べられないように体に毒を持っている訳です。鎧を着ている訳です。典型的なのがバラの棘です。ですから狩猟とか採取の時代に人間が、まだ道具のない時期は比較的小動物を殺して食べたり、ライオンが食べて、ハイエナが食べた後に人様がいただくような事をやってきた。後に道具を使う石器時代になると、あのォー、昔日本にもナウマン像が数万年前までいて、そういうのも倒して食べていたんですね。ついでに申し上げると、農耕が始まるのは一番古くて1万年前で、それ以前は狩猟か採取だから、肉と果物、木の実がずーっと人類の基本的な食べ物でした。
 人間はそいうふうに出来ていますから、肉が無いと、どうしようもない存在な訳で、植物だけでは上手くいかない。植物だけで上手くいくのは牛や馬です。牛なんか消化管4つも持っている。馬もすごく長い消化管を持っていて、そして草を食べて人様の栄養になるものを作ることが出来るんです。そういう力を牛や馬は持っているんですね。
 人間はそうじゃない訳ですが、じゃあ農耕が始まって、お米を日本人はいつ頃から作っているかと言うと、弥生時代ですね。縄文時代が1万年くらい続いて、その後弥生時代に入って行きますけども、紀元前300年くらいからお米を作っていたんですね。日本人の農耕の歴史って、まだ2千数百年です。その千倍もの長い間に肉を食べてきているんですね。だから人間の体というのは、勿論ライオンのような肉食動物ではないから、どうしても野菜をとらなきゃいけない雑食なんですよ。

 肉が中心にならないと人間の体は作られないし、上手く働かない。人間にとって一番大切なのはたんぱく質です。人間の免疫を作り、色んな働きを作っていますが、それは約13万種類あります。それが20種類のアミノ酸で、アミノ酸っていうのはたんぱく質を分解して一番消化吸収される形になったものです。20種類のうち9種類は自分の体で作ることが出来ません。ですから牛や馬が作ってくれるものをいただくしかないです。従ってそういう物は、外から食物として摂らなければならないという意味で、必須アミノ酸と言います。皆さん聞いたことありますね。
 アミノ酸がどのくらい人間の体に役立つのか。例えばアミノ酸と言ったって、動物性の食品が全部体に良いかって言うと、そういう訳じゃあない。例えばクラゲなんて酒のつまみに海栗と一緒に食べると美味しいんだけれど、あんなもの食料にしてしまったら、人間の体は役にも立たないし、余計なアミノ酸を処理するために、人間は老化したり癌になったりします。ですから人間の体に役立つアミノ酸を効率的に摂らなくてはいけない。
 そのための指標が、国際連合食料農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が決めた食品のアミノ酸の有効成分をある量摂られていないと人間は上手く機能しませんよ、という数値でアミノ酸スコアーと呼ばれ、肉、魚、牛乳、卵が100。畑の牛肉と言われる大豆が86で植物性食品の中で一番高い。お米が65、小麦は44になっています。貝類は大豆くらいで80です。私は父親の仕事の関係で魚の獲れる所で育って海鞘(ほや)とか海鼠(なまこ)とか食べましたけど80くらいある。44の小麦は100グラム摂っても44しか使われない、56は無駄になる訳です。ここで皆さん勘違いするんですが、無駄になっても使わなければ良いじゃあないって考えるますが、無駄はアミノ酸を処理するために肝臓とか心臓とかが働かなければならない。それが原因で老化していく。だから使われないから捨てれば良いんだけれども、人間の体は臓器が痛みながら捨てている訳なんです。

 人類は100歳まで生きる遺伝子を持っています。人類の歴史を少し紐解いてみると、大体3万年か4万年前、農耕が始まる3万年前から人類の遺伝子は殆ど変わってないとされています。そしたら100歳くらいまで生きる遺伝子を持っている訳です。平均寿命が50歳超えた民族が登場したのが、わずか100年前です。それはニュージーランド、オーストラリア、スウエーデン、フランス、イギリス、オランダ、アメリカ、まあドイツも1910年頃です。その前に平均寿命50歳に到達した国は無いですが、遺伝子はあるんですよ。3万年も、4万年も前から100歳の遺伝子を持っていても、栄養が悪くて遺伝子の寿命に達しなかったということです。これらの国々は肉を食べている順番からです。日本はどうだったかって言うと、今から100年ばかり前、欧米の進んでいる所が平均寿命50歳を超えている頃、日本の平均は37歳。脳血管疾患、肺炎で死んでいる人が圧倒的です。平均寿命が50歳を超えたのは戦後です。日本は長寿国なんて言ってますけども、欧米諸国より半世紀遅れています。それが肉をだんだん食べるようになってくる現象なんですね。
 私達の研究で分かったことは、食品摂取の種類が多い人ほど長生きをし、健康寿命も長い。だから良い食品とか悪い食品とか言うけれど間違っていて、言い換えると「色んな種類を毎日少しずつ食べましょう」ということです。それから良い栄養素、悪い栄養素とか、脂肪にも魚の脂肪は良いけれど肉の脂肪は悪いとかって、馬鹿なことを言いますね。なぜ馬鹿かって言うのは、健康寿命に関することだけ取り上げてお話しますね。食の多様性ね、10品目の食品(表を指して)を毎日食べている人は、それぞれの食品に点数が付いていて、食品の多様性が多い人ほど点数が高い。そういう人ほど同じ年齢で、他の条件が同じであっても健康寿命が落ちない。沢山の量を食べろと言うのではなく、種類を食べなさいと言うことですね。
 昔の日本人って食べる量が沢山でした。100年前、平均寿命が30歳代です。大正7、8年頃、欧米諸国が60歳に近ずいている頃には、肉なんか一切れも無い。お米5合、味噌汁6杯。味噌汁は今の様に薄くないし、米を5合食べてましたからね。そこに塩シャケ、漬物です。この頃肉を食べていた人もいるんですよ、軍隊です。毎日牛缶が付いていたそうです。そういうことでこの時代は、動物性たんぱく質が3%しかない。3グラムしかない。牛肉を100グラム食べるとたんぱく質は20グラムありますから、牛肉で7グラムか10グラムくらいの量でしかない。魚でも知れている量です。植物性のたんぱく質はいっぱいあります。分かりますね、お米と大豆。でもこれじゃあ駄目なんです、大豆は大切で良いんですけども、大豆だけでは絶対元気に長生きしないです。1980年代になり、30年ちょっと前、この頃に漸く日本は、動物性たんぱく質と植物性たんぱく質が1対1になってきた。そこで病気がね、脳血管疾患が減ってきて、そして平均寿命が世界一になってきた訳です。

 肉を食べるとコレステロール上がるのじゃないか、と皆さんよく言われますね。肉にはコレステロールは多くありませんよ。コレステロールが多いのは卵とか女性の好きな海老とかです。肉を食べたからコレステロール上がることではない。コレステロールが低いと早死になったり、自殺したりしますよ。だから肉をちゃんと摂る事、あるいは乳製品をちゃんと摂る事は大切で、コレステロールが栄養状態が悪くなるほど下がらない働きはする訳です。コレステロールの7割は自分の体で作っていますから、コレステロールを摂ればコレステロールは増える。それ以上に今日皆さんに覚えていただきたいのは、実はコレステロールは悪者扱いで30年、40年来ましたが、今から30年くらい前から、コレステロールが低いことが拙いっていう事が分かってきたんです。
 それを証明するのに大きな働きをしましたのが小町先生といって筑波大学の教授ですが、大阪成人病センターにおられた時に、色んな地域のコレステロールと脳卒中の関係を調べられました。そうしたら脳の血管が破れる脳卒中ね、日本人に多いために欧米諸国に平均寿命が追いつかなかったんです。昭和40年くらいから脳卒中が減ってきましたね。これ脳の血管が破れるタイプも詰まるタイプも減ってきた。その背景には肉とか乳製品が多くなって減ってきたと。そこで脳卒中は、どういう栄養状態と関係するのか調べらましたら、例えば典型的な東北のある地域なんですけども、中高年のコレステロール平均値が150ちょっとしかなかったですね。そうすると脳出血とかがものすごく多かった。それで10年後、50年代に入って食生活が変わって、コレステロール値が上がってきました。そうするとですね、脳出血は半分くらいに減ったですね。脳卒中には血管の破れるものと詰まるタイプがありますが、コレステロールの低い時代は多く、高くなって減ってきています。
 肉とか乳製品を食べる食生活になって、塩が減ってくると脳卒中が減ってきた訳です。平均寿命が欧米に追いついて、世界一の仲間入りをするまでになった。この辺のところを皆さんにぜひ頭に入れておいていただければと思います。この脳卒中が減り始めた昭和41年に病気と死亡率の関係が調べられましたが、元々日本人はお肉を食べていない。私の学生時代も、昭和30年代ですが今の4分の1も食べていない。
 だから私は、最初は高齢者に対して肉を食べましょうって言ってきたんです。30年くらい前からね。その頃肉と魚が1対3くらい、お魚が3ですよ。私は長い間1対1を主張してきました。現在どうなのかって言うと、高齢者に限って言うと、まあ魚2と肉1で、逆に若い人は肉3魚2。ですから僕は、若い方に対しても1対1にして魚を増やしましょうと。そうすると1対1になるでしょう。高齢者の場合は魚を減らして1対1にするんじゃなくて、お肉を上げて1対1にしましょうって言うのが、私のモットーなんです。だから肉だけを食べようって言っているのではないのですよ。食品の種類が多いほど良いですから。私は良く外国に招かれて講演するんですけれども、外国に言ったら逆に、皆さんは肉を減らしましょうって。というのもアメリカ人は、日本人の約3.5倍食べています。

 僕は色んな肉を食べた方が良いと言ってます。牛肉には牛肉の個性があるし、鉄分なんかは牛の赤い部分にあるし、赤くない部位には抗酸化物質が入っているとか、豚にはビタミンB1とか、色々個性があります。欧米の場合には日本人の2倍から3倍ですね。それから乳製品で、平均日本の4倍摂っています。だから「日本の場合は増やしましょ」と言っています。魚はどれくらいかと言うと、フランスが多くて1日30グラム、日本人の大体2.5分の1。アメリカは日本人の4分の1から5分の1。だから欧米人には魚を増やして肉を減らし、乳製品を減すように、それと大豆も食べましょうって言うんです。アメリカは大豆食べないですね。日本人には肉と魚1対1、牛乳200cc、卵1個、それと350cの野菜をちゃんと食べましょうと主張してきました。食の多様性、食品の数を増やしましょうと私は言っているんです。
 実は今日のテーマは「肉を食べると長生きする」ですけども、昨年亡くなったやなせたかしさんとか80を超えて元気な現役の方をインタビューしたことがあるんですが、食生活ではお肉をよく食べる。三浦雄一郎さんは1キログラムくらい食べる、あんなに肉食べ無くてもいいんですけども、バランスの良い食事の中で、日本の高齢者は、伝統的に不足しがちなのは肉なので、肉を不足しないようにして下さい。そういうことでちょうど35分になりましたので終わります。

(講演の内容は、主催者が抄録してまとめました/服部栄養専門学校にて)

講師プロフィール
◆柴田 博◆
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人間総合科学大学保健医療学部長・大学院教授 医学博士。●現在は老年学、老年医学を専門にして、この分野での第一人者。高齢化社会の日本にあって、高齢者問題に「食」の視点から的確なアドバイスを続けている●『中高年の栄養常識を疑う』(講談社)、『中高年こそ肉を摂れ』(講談社)、『肉を食べる人は長生きする』(PHP出版)、『肉食のすすめ』(リュウブックス)など著書多数

【お肉のコラム】
◆食肉の見分け方、選び方◆

新鮮、風味、食感を目で見て選ぶコツを知る。

色を見る/牛肉
精肉にカット後は沈んだ赤色から、鮮やかな紅色に発色し、肥育の良いものは艶のある鮮紅色になる。時間の経過で一般的には、発色作用は次第に弱まり、変化して暗赤色になるが、すべて変質または腐敗している判断は誤り。風味の点では劣化を考えられる。
和牛の表示/黒毛和種。褐毛和種。日本短角種。無角和種。この4品種とそれぞれの品種を交配したものを和牛と表示できる。

色を見る/豚肉
良質はやや灰色がかった乳白色で、粘りのある硬めのもので、良質の脂肪のある「餅豚」と呼ばれる。一方柔らかい脂肪のものは「水豚」ともいわれ、平均して肉質はきめ粗い。

食肉に関するデータ:公益社団法人 日本食肉協議会発行『食肉の知識』引用
◆老化防止のための10品目◆
食品摂取の多様性が高いほど長生きできる。そのために必要な食品は主食、淡色野菜を除く以下10品目である。

肉類、魚介類、卵類、牛乳、大豆・大豆製品、緑黄色野菜類、海草類、いも類、果物、油脂類
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中華の講座

第2部


脇屋 友詞料理話
おいしい調理のコツ教えます
1水煮牛肉 2醤肉 3玄米入り元気がでるちまき

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「醤肉」醤油肉

──材料<作りやすい分量>──
豚バラ肉  400g

A:
醤油    400cc
赤唐辛子  2本
粒山椒   小1

──作り方──
@豚バラ肉は4cm幅に切る。Aを混ぜ合わせ漬けダレにし、豚バラ肉を一晩(約8時間)漬ける。
A漬け込んだ@の汁気を切り、S字フックなどを使って雨のかからない軒下やベランダに二日吊るして風干しする。
BAをさっと水洗いし、蒸気の上がった蒸し器にいれ、約1時間半蒸す。

玄米入り元気の出る「ちまき」

──材料<作りやすい分量>──
もち米   400g
玄米    150g
醤肉    適量

A:
サラダ油  大2
生姜(みじん切り)小1
干し海老  大1
干し貝柱  大1
ザーサイ  大1

B:
酒     大1
オイスターソース 小1
塩     少々
胡椒    少々
スープ   大2
山椒    少々

──作り方──
@玄米、もち米は浸水し、ざるに上げて水気を切る
A@を蒸し器で20~30分蒸す。
B鍋をよく焼き油をなじませ、Aを入れ香りが出るまで炒めてからBの調味料を加えて味を整える。
蒸し上がったAをボウルに入れ、炒めた具材とよく混ぜる。
CBを50gずつ俵型にし、薄切りにした醤肉をのせてラップで包み形を整える。

「水煮牛肉」沸騰油の激辛唐辛子煮込み

──材料(4人分)──
牛もも肉  200g
木綿豆腐  1/2丁
きゅうり  1本
セロリ   1本
豆もやし  100g
朝天唐辛子 30g

A:
塩     少々
胡椒    少々
溶き卵   適量
片栗粉   少々
白絞油   少々

B:
葱油    大1
にんにく(みじん切り)小1
豆板醤   大1
紹興酒   大1
毛頭    400cc
醤油    大2
砂糖    大2
胡椒    少々
白炒り胡麻 小1
粉山椒   少々
ラー油   大1

C:
塩     小1
胡麻油   大1/2

D:
香油    600cc
*無ければ白絞油でも可
粉山椒   小1
辣粉    小1

──作り方──
@牛肉は薄切りにしてAで下味をつける。豆腐は6等分にして水気を切る。野菜は一口大に切り、耐熱ガラスのボウルに入れておく。朝天唐辛子をボウルに入れ熱湯を注ぎ、やわらかくなったらザルに空けて水気を切る。
A鍋にBの葱油、にんにく、豆板醤を入れて炒め、香りが出てきたらBのその他の調味料を順に入れて沸かす。
豆腐を加えてコトコト5分ほど煮る。牛肉は油通しをしてから豆腐と一緒に軽く煮る。
B@のボウルに入れた野菜にCを加えて軽くもむ。そこにAの豆腐と牛肉を上からのせる。
C鍋でDの香油を180~190°Cに熱する。BのボウルにDの粉山椒と辣粉をふり、@の朝天唐辛子をのせ、熱した香油を八分目まで注ぎ完成。

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 いいお肉も安いお肉も、色んなお肉を使うのが中国料理です。今日は牛肉がテーマです。
 ロース肉とかヒレ肉とかありますが、もも肉と言いまして、ちょっと硬いシチュウとかに使う肉を薄切りにして、唐辛子とかでやってみます。それから今日は、皆さんにオレンジ風味の付いた香りの良いお茶を飲んでいただきたいと思って持って来ました。試食で食べていただくと、喉渇くでしょ。料理って言うのは香りが大切です、お茶も香りです。あっ、試食の話は内緒ですからね、この講座だけですから。それで今日のレシピを覚えたら、他の人に渡しちゃあ駄目ですよ、ここに来た人だけですから。(会場笑い)。
 最初は沸騰油の激辛唐辛子煮込み。料理は下処理が大切なんですね。牛肉にはお塩、胡椒、卵をつけておいて、下味をつけておくことが大事です。この下味がないと美味しくできないですね。牛肉は力があるので、水分を吸っていってくれる。味付けを先ずしておきました。鍋にBの調味料を入れる。豆板醤は熱い所でやると焦げる、鍋端でね。それとお豆腐は味がしみこまないのでたっぷりのスープの中に入れる。煮込むような感じ。これが最初の下処理です。

 ばら肉を買って、このように棒状にする。安くて美味しいこのお肉でジャンル―を作ります。2つ目の醤油肉です。チャイナベーコンだと思ってください。簡単なのだけど、(色々料理に使え)すごく重要で、便利です。お肉とお醤油、赤山椒、粒山椒これだけ。お肉は醤油を1回沸騰させて醤油漬けし、1回水洗いし、その中に1日浸けておく。出来るでしょ、家庭でもね。その後ハンガーで吊るすような所に干して置く。生の肉が醤油に1昼夜漬かることで醤油のエキスがばら肉に染み渡るんです。外だと埃が付いているじゃないですか、お湯洗いしてそれを蒸します。醤油漬けベーコン、もの凄く美味しいですよ。
 お醤油肉は「浸けて、干して、蒸す」ですよ。今の時期には白菜、春雨と一緒に煮ても美味しい、騙されたと思って皆さん、やってみて下さい。簡単で、美味い。本当は僕これ、お醤油肉を今日教えたくなかったんです。僕が15歳の時に中国・上海で、中国の人から習いました。この醤油肉使って、3つ目のレシピのちまきをやってみます。

 ご飯の味とお醤油肉の相性が、こんなに良いんだってことが分ります。蒸しておいたご飯をボールに移し、そこに「レシピ AとB」で作ったソースをかけると、要は雑ぜご飯みたいなものです。貝柱と山椒と干し海老の旨味、ザーサイのちょつとした塩分が入り、この「たね」を作っておにぎりにしたところで、お醤油肉を上にのせて蒸します。それでこうやってラッピングしておくと、お客様がいらした時に、電子レンジや蒸籠に入れるだけでいい、というように作って置ける。皆さん先ず、お醤油肉から食べてみて下さい。齧った時のお醤油肉の旨さってものが、口の中にパーと唾液が出る訳ですよ。そこをお米と一緒に食べる訳です。
 醤油肉だけを作ってしまって、炊き込みご飯も出来ます。普通のお米に、薄く切った醤油肉を入れて、今だったらソラマメ、タケノコをいっぱいのせて、ご飯炊いてみてください。もの凄い醤油の香りが出たご飯になります。また今はね、白菜と豆腐と春雨を鍋に入れて、このお醤油肉を入れて、煮て食べて下さい。それだけでもお醤油のエキスがどんどん出てきて、肉の旨味成分が出てくるんですね。

 何でお肉がおいしくなるのかっていうのは、お醤油を浸けて物を干す、干すことによって乾燥し風味が良くなる。風にあたって風味が良くなっていき、それを今度蒸すことによって、肉の旨味成分がふわっと出てくる。お肉が美味しくなる秘訣でした。
 中国の人達は寒い時期に塩漬け肉。豚のバラ、鶏肉、牛肉、色んなものを漬けておく。本来は、お正月前に漬けてあったりして、お正月にその塩漬にしたものを、やはり水洗いして、蒸してアヒルだとか鳥だとか豚肉だとか、それをお野菜と合せて食べる。要は乾物っていうのは保存が効くんです。保存させる。塩に漬けたり醤油に漬けることによって、生で食べる旨味とまた変わってくる。それは漬けるだけじゃあなくて干すことによって、ぜんぜん風味が変わってくる。
 お魚もそうだと思うんですけど、鯵の開きだとか、ちょっと一夜干しにするだけでも、旨味成分がぐっとくるのと同じで、塩でも醤油でも同じです。日本の醤油はピカ一の調味料ですね。美味しいんですよ。この美味しい醤油に山椒と唐辛子を加えるだけでいいんです。それに漬けるだけでこれだけのうまさの自家製のベーコンが出来てしまうということで、皆さんこれを作ってね。これを代表にして色んな物を作っていくと、お弁当なんか最適です。お弁当、ご飯を入れてよく昔やったのり弁じゃあないですけど、最初にこの豚を入れ、そしてご飯、そして豚を交互に入れ、そうして食べてみてください。ものすごい相性が良いです。ご飯をいっぱい食べられます。勿論おにぎりも良いですね。
 今日のお料理の中で質問ありましたらなんなりと、時間がまだあります、どうぞ。

(講演の内容は、主催者が抄録してまとめました/服部栄養専門学校にて)

講師プロフィール
◆脇屋 友詞◆
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Wakiya一笑美茶樓 オーナーシェフ●中華料理で名高い赤坂山王飯店、東京ヒルトンホテル、キャピトル東急ホテルなどを経て、27歳でホテルの料理長になる。パシフィックホテル横浜(現横浜ベイホテル東急)では中国料理総料理長として皇太子夫妻のご夕食調理総責任者となる。13年前独立してオーナーシェフになる。平成22年に厚生労働省から「現代の名工」を受賞。同24年農林水産省による料理人顕彰制度「料理マイスター」を受賞。海外のチャリティーイベントに参加し、食を通じて社会貢献活動にも積極的●『新しい中華のおかず』(主婦と生活者)、「中国料理秘伝帳」(柴田書店)など著書多数。

【お肉のコラム】
■牛肉部位の特性と料理用途

部位と呼び、小売販売ではどの部分に相当する肉かを表示しています。特質を理解して、どんな料理にむくのか調理目的によって正しい使い分けが肝心です。
beef-parts-fig ・ネック
首の部分。肉色は濃い目できめが粗く、肉質は硬い。ほとんどが赤身のためひき肉に最適。煮込むとスープストックの良い素材。
・かた
腕部分の総称。肉色はやや濃く、筋膜や腱が多いため肉質は硬い。エキスやゼラチン質が多く、煮込み料理やスープの材料に最適。筋膜や腱を取り除き薄切りにすれば幅広く利用できる。
・かたロース
最もきめが細かく軟らかい肉質の優れた最高部位。薄切りにしたものは幅広い牛肉料理向き。厚切りにして焼くとコクのある風味が楽しめる。
・リブロース
通常、ロースと呼ばれる部位。肥育した牛のロースの断面は見事な霜降り状態となる。若齢のものでも、きめの細かい優れた肉質を持つ。「すき焼き」「しゃぶしゃぶ」「ローストビーフ」「ステーキ」に最適。
・サーロイン
代表的なステーキ部位。ロイン三点(リブロイン、サーロイン、テンダーロイン)の中でもサーの称号を冠する最高の肉質を持つ。骨付きのままのステーキカットには次の二つがある。ティーボーンステーキ(骨付きのまま内側についているヒレを同時にカットしてある。断面の骨の形がT字型をしている。風味の良いサーロインと柔らかいヒレを同時に味わえる最高のステーキカット)。エルボーンステーキ(サーロインについた骨がL字型に残るようにカット。骨に沿った肉のうまみと、骨についている骨膜、筋膜が牛肉の味を一層引き立てる)。
・ヒレ
牛肉の中では最も運動をしない部位のため一番柔らかい。ヒレ本体には脂肪がなく、周辺の脂肪も精肉にする際除去される。きめが細かいので調理する際は煮過ぎ、焼過ぎに注意が必要。過度の加熱は表面を硬くし、風味を損なう。
・かたばら
肩の部分にあるばら肉。厚みがあり、かたロースに接する一部は濃厚な風味があり、特に「ショートリブ」と呼ばれる部分はリブロースと並び高く評価されている。焼肉のカルビの高級なものはこの部位を使用している。骨付きで煮込むと最高のスープが取れる。
・ともばら
通常「ばら」と呼ばれる。繊維質、筋膜が多くきめの粗い部分ではあるが濃厚な風味を持つ。大衆的な牛丼や焼肉はおおむねこの肉を使用。肋骨をばらに付けて骨付きで煮込むと濃厚なスープがとれる。
・うちもも
赤身を好む人には最適の部位。ほとんどの牛肉料理に適し、ブロック(もも)にして「ローストビーフ」など整った形状での利用が可能。米国では赤身中心の健康志向からラウンドステーキとして人気のある。
・しんたま
うちももとほぼ同様の肉質を持つ赤身中心部位。別名を「しん芯」(もも)といい、ラウンドステーキ、焼肉に適する。
・そともも
もも系の中では運動量の多い部位で、全体的にきめが粗く、肉質はやや硬いが薄切りや煮込みに用いれば問題はない。「はばき」「しきんぼう」「なかにく」の三つに分けられ、「はばき」はすねに近い特質を持ち、「しきんぼう」は最もきめの粗い部位であるが形状が整っており、使用目的によっては利用範囲が広がる。「なかにく」はきめがそれほど粗くないので一般的な牛肉料理に利用できる。欧米ではこの部位をコンビーフに加工している。
・らんいち
「らんぷ」と「いちぼ」と呼ばれる大きな筋肉の塊から構成される部位。らんいちはロイン三点の高級部位に次ぐ純高級で評価が高い。背脂肪を除去すれば柔らかい赤身肉となる。「ランプステーキ」で知られるように、焼く料理に最適。
・すね(まえずね・ともずね)
前肢を「まえずね」、後肢を「ともずね」と呼び、特質は同一だが、スープストックには「ともずね」が良いとされる。きめは粗く、肉質は硬い。筋膜、腱が多いがエキス分、ゼラチン質に富む。ほとんど赤身のためひき肉用に、また骨付きのものは煮込み用肉として評価高い。

食肉に関するデータ:公益社団法人 日本食肉協議会発行『食肉の知識』引用
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